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川内原発火山審査について規制委の火山検討チームの議論から

福島老朽化原発を考える会のメーリングリストより転載します。

 

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みなさまへ<長文容赦・転載歓迎>

川内原発火山審査について規制委の火山検討チームの議論から
http://kiseikanshishimin.jimdo.com/2014/09/04/kazan2kai/
FFTV)http://youtu.be/6yeLxRWpsYw?list=UU_BSKupMkSLCXXT_di864sw

原子力規制委員会火山検討チームの第二回会合が9月2日に開かれました。

第一回の火山検討チーム会合における火山の専門家の指摘は、

川内原発火山審査の根拠を失わせるものでした。

しかし、第二回の会合で基本的考え方案と書かれた1ページ半の文書が

検討に付され、規制委・規制庁側が反論を跳ね除け、あとはこちらで

まとめると強引に引き取ると、それを待っていたかのように、

川内原発の審査書が10日に確定との報道が流れました。

 

火山検討チームの二回の会合は、あからさまに川内原発の火山審査に

疑問を抱く良心的な火山の専門家のガス抜きの場でした。

火山専門家の指摘を無視し、自ら定めた火山影響評価ガイドに明確に

違反しながら、結論ありきの非科学的で露骨に政治的な対応で、

再稼働を認めようとしています。3つの点を指摘したいと思います。

◆運用期間中の巨大噴火の可能性についての議論を拒否

第一回の火山検討チーム会合において、火山噴火予知連会長で

東大名誉教授の藤井氏が、ドルイット論文について、これが、

サントリーニ火山ミノア噴火という一例について、噴火直前の

100年程度の間にマグマ供給速度が上昇したという知見であり、

カルデラ一般について述べたものではない、これはドルイット氏本人に

確認したと指摘しました。

 

藤井氏はさらに、ドルイット論文に議論があるように、マグマ溜まりの

沈降などにより、マグマ供給速度の上昇により地表の隆起がみられるとは

限らない、と指摘しています。

この論文は、九電及び規制委が、巨大噴火が予測でき、しかも核燃料の

搬出に間に合うとの主張の根拠に使われているだけでなく、

川内原発の運用期間中に巨大噴火が発生しないとの主張の根拠にも

使われています。その前提が崩れたのです。

第二回の会合において、藤井氏は、基本的考え方案に「運用期間中に

カルデラ噴火に至るような状況ではないと判断している」との表現があり、

第一回の指摘が全く反映されていない点について質したのに対し、

島﨑委員長代理は、理由もなく、そこまでさかのぼって議論するつもりは

ないと一蹴しました。

いまさらそんな根本的な提起をされても困ると言いたげでした。

規制委・規制庁はこれまで火山審査から火山専門家を遠ざけ、

意見を聞く場を設けてきませんでした。その付けが回ってきただけです。

火山専門家にしてみれば、ようやく意見を述べる場ができ、

意見を述べたら、そんなこといまさら言われても困ると突き放なされる…

失礼きわまりない対応です。

 

根拠となる論文の著者に確認した上での事実指摘を、検討もせず、

理由もなく一蹴するやりかたは、とても科学的な検討を行う姿勢ではありません。

運用期間中の巨大噴火の可能性については、川内原発の適合性審査の中で、

ほとんど審議されてきませんでした。

九電は当初、南九州のカルデラの巨大噴火9万年周期説を拠り所にし、

さらに長岡氏の噴火ステージ論を持ち出しました。

その双方について、審査の外で、火山学者らが批判してきました。

「約9万年の周期性がある」という九電の主張に対し、

規制委審査書案は、「平均発生間隔は約9万年」と書くのが精いっぱいでした。平均が9万年というだけでは、当面発生しない根拠にはなりません。

噴火ステージ論についても、適用できない事例が多々あるとの指摘を受けました。

そこで九電が最後に繰り出してきたのが、噴火の予測が可能だという論拠に使っ
ていたドルイット論文でした。

100年程度前に発生するマグマ供給速度の上昇がみられていないので、

当面は大丈夫だと理屈です。

それが藤井氏の指摘により、ひっくり返ったのです。

運用期間中にカルデラ噴火に至るような状況ではないという判断について、

規制庁・規制委が議論を避けたのは、火山影響評価ガイドにより、

これが否定されれば、即立地不適となるからでしょう。

ここに触れないことが、火山検討チーム設置の条件だったのかもしれません。

いずれにしても、良心的な科学者を侮辱する行為であり、許されざるやり方です。

適合性審査における九電の説明では、姶良(あいら)カルデラは

毎年0.01立法キロの速度でマグマが供給され、それが噴火の度に

放出することを繰り返しながらも、ゆっくりした速度でマグマが

溜まり続けています。

 

火山専門家の指摘によれば、ゆっくりと溜まり続けるマグマの総量は

不明だし、マグマの供給速度の変化がゆらぎなのか、そうでないのかの

区別は難しい、そしてマグマの供給速度の変化が地表の地殻変動の変化に

そのままに現れるとは限らず、観測に引っかからないかもしれないとのことです。

規制委・規制庁が、火山専門家の指摘を無視して審査書を通すのは、

自らが決めた火山影響評価ガイドに違反しており、川内原発の安全確保に

逆行する行為です。自らの存在意義を失わせるものでもあります。

◆噴火の兆候把握と対処の判断基準を定めよとの火山ガイドを無視

基本的考え方案には、噴火の規模や時期の予測は困難だと言いながら、

なんらかの異常が検知されたら、空振りを覚悟で対処させるなどと

書いてあります。

困難だがモニタリングをやっておけば、予測に基づく対処は可能だ

という前提に立っています。

会合で、規制庁幹部で原子力規制部長の櫻田氏は、話をモニタリングに

もっていこうと必死になっていました。

そんな中で、産総研の篠田氏から鋭い質問がありました。

モニタリングについての話はいいが、噴火の兆候の把握と対処について

判断基準はどうするのだ、というものです。

篠田氏は、ドルイット論文に従い、マグマの供給速度が、0.05
立法キロを超えているとみなされる状況で、巨大噴火の可能性を判断する、

九電が「判断基準」として提示した内容を挙げながら、判断基準は

いったいいつ誰がつくるのか?この検討会で決めるのか?と質問したのです。

規制庁の地震・津波・火山の責任者である小林安全管理官が

「それをこれから、この検討チームの場で議論してください」と回答しました。ここで、規制委・規制庁の人たちが忘れていること、あるいは忘れているふりをしていることがあります。

それは、火山影響評価ガイドの火山についての立地評価をクリアする

条件の中に、火山活動の兆候把握時の対処方針を適切に定めることとあり、

その対処方針の中に、「対処を講じるために把握すべき火山活動の兆候と、

その兆候を把握した場合に対処を講じるための判断基準」とあり、

「判断基準」が明記されていることです。

どのような兆候を異常とみなして対処するのか、それを適切に定めない限り、

九電は火山影響評価ガイドを満たしたことにはならず、審査は

通らないはずです。
だからこそ九電は、適合性審査会合の場で、判断基準案を提示したのです。

ところが、小林氏は、第一級の火山専門家を集めた検討チームで、

これから検討していきましょうと述べているのです。

小林氏は、九電の判断基準ではなく、規制委側の判断基準だと

言いたいのでしょう。

しかし、規制委側でこのような状態であるのに、九電に適切な判断基準の

策定ができるとはとても思えません。

九電が適合性審査会合で提示した判断基準案は、篠田氏の指摘の通り、

ドリットル論文に完全に依拠するものでした。

当初は、ドリットル論文に指摘されたマグマ供給速度である

毎年0.05~0.1立法キロのうち、0.1立法キロの方を

用いたことから、島﨑氏がダメ出しし(4月23日)、その後、

より保守的な0.05立法キロを用いた判断基準案を出し直したと

いう経緯がありました。

そのドリットル論文の安易な適応について、藤井氏から重大な指摘が

あったのは既に述べた通りです。

判断基準については、結局九電の補正申請には盛り込まれず、

「火山の状態に顕著な変化が生じた場合は」とあるだけでした。

審査書案は、モニタリングを強調し、兆候の判断基準については

記述を避けています。

このまま申請を通すのであれば、これもまた火山影響評価ガイドに

違反することになります。

規制委・規制庁は白を切るのもいい加減にやめていただきたいと思います。

◆核燃料の搬出はどうするのか?間に合うように予測することができるのか?

基本的考え方には、噴火の兆候把握時の対処として、原子炉の停止だけを

記載し、核燃料の搬出については記載がありません。

噴火の時期や規模を予測することは困難と認めたうえで、何か前兆が

あれば原子炉の停止を求めるなどするからよいのだと。

しかし火山影響評価ガイドは、「火山活動の兆候を把握した場合の

対処として、原子炉の停止」だけではなく、「適切な核燃料の搬出等が

実施される方針」をも要求しています。

原子炉の停止とは違い、核燃料の搬出には年単位の時間がかかります。

川内原発には約二千体もの使用済み核燃料があり、搬出手段の確保や

搬出先の確保を考えると何十年もかかる措置です。

これの方針をあらかじめ定めておきなさいというのが火山影響評価ガイドの

要求ですが、そのためには、燃料の冷却期間の確保、搬出手段の確保、

搬出先の確保をどうするのか具体的に検討しておく必要があり、

特に、これらにどの程度の時間がかかるかを想定する必要もあります。

というのは、そのための十分な期間をもって噴火の予知・予測ができるのか

という問題に関わってくるからです。

この点について、火山検討チームでは、一般に噴火の予知・予測は

難しいのに、何年も前にこれを行うことなどとてもできないのではないか

という火山専門家からの指摘が相次ぎました。

九電・規制委は、ドルイット論文を根拠に、100年程度前に

予測ができるから大丈夫だという主張をしていましたが、

これについても、藤井氏からの重大な指摘により通用しなくなりました。

第二回の検討チーム会合では、規制庁の安池氏が、これまでは、

巨大噴火については、兆候も早い時期から大きく現れると思っていたが、

そうとは限らないことがわかった旨、正直に述べていました。

結局、九電は申請書で「破局的噴火への発展の可能性がある場合は、

発電用原子炉の停止、適切な燃料体等の搬出等を実施する」としか

書けませんでした。

これは火山影響評価ガイドの要求をそのまま書いたものであり、

方針の具体的な中身やそれが実施できる根拠は何も示されていません。

書いていないというだけでなく、方針がないのです。

これに対し、審査書案は、核燃料の搬出を実施する方針と書かれているから

オッケーだというのですから驚きです。

こんなことが通用すると思っているのでしょうか。

これも明らかに火山影響評価ガイド違反です。

これから時間をかけて具体化していくというのであれば、その間、

再稼働にはストップをかけるべきです。

川内原発の火山審査に専門家から疑義噴出
審査「合格」の根拠崩れた形に
中村 稔 :東洋経済 編集局記者
http://toyokeizai.net/articles/-/47016

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